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「自転車は車道」における日経新聞の長閑さ

歩道自転車06

 当ブログに「自転車は車道、場当たり的な交通行政」を書いた翌日、日経新聞電子版に「自転車は車道」の方針に懐疑的な社説が出た。
 大筋は同じ方向を向いており、とても嬉しいと思うのだが、さすがはハイヤーを使い慣れた大手新聞の社説担当者さんというか、ちょっと長閑で道路の実情が見えていない気がした。自分のブログの補足説明のつもりで、少し引用させていただく。

>車道では、自転車に乗る人が安全を心がけるのはもちろん、車を運転する人にも自転車と「共存」する意識が欠かせない。時には道を譲り、スピードを緩める場面も多くなるだろう。
>歩行者の安全を守る代わりに、自転車の危険が高まってしまうのでは意味がない。社会全体にある、「車道の主役は車」という発想からなくしていこう。


 記事の自動車が自転車に道を「譲る」という状況が、何を指すのかよくは分からないが、運転免許の講習では、歩行者や自転車を追い越すときは、徐行するか間隔を1m以上空けろと習った。
 国家公安委員会が作った「交通の方法に関する教則」によると「追越しなどのため自転車のそばを通るときは、自転車のふらつきなどを予想し、自転車との間に安全な間隔を空けるか、徐行しなければなりません」とある。
 そのとき教官の方が「徐行とはどんな速度だと思いますか? 、いいですか? 、徐行とはただちに停止できる速度なんです。ただちに」と強調されたのを、免許取得後30年以上経った今もよく覚えている。よき指導者であったと思う。
 具体的には、自転車が車の直前で大きくよろけたり、急に向きを変えたときに、ぶつからずに止まれる速度ということだろう。たとえ低速であっても、歩行者や自転車に自動車がぶつかれば怪我を負わせること必至。徐行は当然である。

 ただ住宅地のように、交通量が少なく車の流れがゆるやかな道路なら徐行も可能だが、歩道があるような広い道路ではどうだろう。長い列をなして高速で流れている車の中で、度々「徐行」状態にまで速度を下げるのは危険であり、道路機能のマヒにもつながる。また安全な間隔を空けて走るのも、車幅や道路の幅によっては大きなリスクを伴う。ゆったりした規格の道路でも車線間隔は3.5m程。10t車なら左右50cmずつの余裕しかない。つまり、譲りたくても簡単には譲れない道路事情があるのだ。

 そもそも歩道とは、そうした日本の過密な交通状況において、歩行者の安全を守ると同時に、自動車の円滑な流れに資するために存在している。段差とガードレールで、自動車と歩行者(慣習的に自転車も)が安全に区分されていることを前提に、信号や標識などの付帯設備を整え、制限速度が設定され、大量の自動車を円滑に流そうとしてきたのではないだろうか。そうやって積み上げてきた設備やノウハウを、歩道が整備される前の原始的な複合交通にもどそうというのだから、これは「共存」ではなく「混沌」でしかない。
 この問題は安全に対する心構えで解決できるものではない。人と車の安全と円滑な物流を両立させるために、道路の機能と運用をデザインすることが求められているのだ。

 「社会全体にある、車道の主役は車という発想からなくしていこう」とあるが、その趣旨は「自転車は車道」と決まってしまった以上、少しでも安全にということであろう。しかし、実際に車道は自動車が主役となるように作られており、自転車が大きい顔で走れるようには作られていない。

 車道の端というのは、アスファルトの舗装面から一段低くなったコンクリート製で、場所によって傾斜してたり段差があったりする。また、砂やゴミがたまっていることも多い。こんなものは車輪のついた乗り物が通る場所ではなく、道路のバリ(型に材料を流し込んで成形する際、材料がはみ出したヘタのような部分)のようなものである。
 もし自転車も車道の主役というのなら、せめて自転車が通る部分を、自動車並みの「道路」にしておく必要がある。

歩道自転車02
最近車道の幅が広い道路に設置された自転車専用レーン。これがベストとはいえないが、この広さがあれば少しは安心感が増す。ただし、この幅の歩道と自転車レーンを作るには、片側2車線の道路を1車線に減らすか、道路に面した土地を収用して道幅を広げる必要がある。実現は容易なことではない。
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Comment

No Title

ちょうど当地の新聞でもこの話題を取り上げて
ました。
当地は積雪で車道も(歩道も)狭くなるので
車道を自転車で走るのはとても危険です。
まあ、私は冬期間(積雪時期)は利用しませんが、
仮に車道を走るとしても歩道と車道の段差が
あるので急に歩道に避けるなんてことはできません。
これは13歳未満と70歳以上には免除されるんですね。(この年齢は歩道を走ってもいいと)

Re: No Title

近年のコペンハーゲンは自転車の普及が凄まじいそうで、
都市交通の50%ぐらいは自転車でまかなっているそうです。
しかも、自転車の平均速度が日本よりずっと高く
市内で最も便利な乗り物になっているとか。

その理由は、道路の自転車専用レーンが充実していて、
自動車のように走行車線と、追い越し車線があります。

また、自転車の管理ルールも厳格で
右折左折などには廻りに合図をしなければならないし
整備不良も罰せられるそうです。

ヨーロッパ人は車輪のついた乗り物に乗れば
飛ばしてナンボ的なところがあり、馴れない日本人が
その中に投げ込まれると、ついていけるようになるまで
しばらくかかりますね。

自転車といえば、コペンハーゲンではありませんが、
ロンシャン競馬場へ行ったとき
公園の中の道をフラフラ歩いていて、オッサンの乗った高速自転車に
轢かれそうになったことがあります。シャーッという自転車の走行音が
今も耳に残っています。公園の中にもちゃんと自転車の道があって
地元の人はそこをよけて歩いていたのですね。
そして彼らはローカルルールに則って、限界まで飛ばします(笑)

ところで、コペンハーゲンの冬は北海道とどっこいだと思うのですが
自転車道路もきれいに除雪され、しっかり走っているようです。
タイヤはどうなっているんでしょうね。

> これは13歳未満と70歳以上には免除されるんですね。

ほんとにおためごかしなルールです。
それに、中学生の自転車に身の危険を感じるときがあります。
その辺は分かっているのでしょうかね。
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プロフィール

Kimupon_Cicadan 木村 義志

Author:Kimupon_Cicadan 木村 義志
出身地 : 大阪市
現住所 : 東京都
1955年生まれ
科学図書執筆編集のお仕事
分野は生物学系

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