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うだつが上がる土佐の「水切り瓦」

 「うだつが上がらない」という言葉の「うだつ」は、装飾的な防火壁の「うだつ」からきていることはよく知られている。つまり、家に立派なうだつを上げる(設置する)のは金がかかるが、うだつぐらい上げられないようでは一人前とは言えない。うだつの上がらない家はうだつが上がらない、ということだ。
 しかし、所変われば品変わる。南国土佐には「うだつ」と同じ社会的意味を持つ「水切り瓦」というものが存在する。特に室戸市吉良川町は水切り瓦を多用した明治期の建物が多く残り、重要伝統的建造物群保存地区に指定されている。
吉良川町並み04
吉良川町の町並み
吉良川町表蔵02 吉良川町表蔵01 足利水切り土蔵
吉良川町の土蔵・腰壁なまこ 吉良川町の土蔵・近年補修   比較参考・栃木県足利市の土蔵

 水切り瓦とは、蔵や住宅の壁に何段か重ねて付ける小さなひさしで、強い雨や日差しから壁を守る働きがあるという。蔵など窓のない広い壁面にひさしを追加するのは日本各地で見られるが、高知の水切り瓦は小さいものを何段も重ね、ひさしというよりフリルのイメージ。
 技巧的な左官仕事で装飾性が高い、というか、実用性より装飾性に重きが置かれ、技術的にも高度な壁であるから費用がかさみ、その家の経済力を示す記号となっている。。

吉良川町並み02 吉良川町水切り瓦  水切り断面

 ひさしには平瓦を横方向に用い、左官職人が技を駆使して美しくかつ頑丈に取り付ける。土や漆喰の強度は職人の腕によって大きく違うものだが、土佐の水切り瓦を施工する職人は、毎年襲ってくる台風にも耐え100年持つ技術を伝承しているという(断面図は中脇修身の土佐漆喰を参考にした)。

吉良川町商店m34s

 水切り瓦は、土蔵だけでなく、住宅や商店にも見られる。上の写真は塩や醤油を商う商店。以前は雑貨を扱っていたという。明治34年築。二階は厨子二階(つしにかい)といって、天井が低い江戸後期~明治の様式。こうした黒漆喰の古い商店は各地に残っているが、二階の壁に水切り瓦が取り付けられているのが、この地方独特の意匠である。屋根のひさしが覆いかぶさっているので水切り瓦の実用性はゼロ(笑)。

 吉良川町には古い建物があるだけではなく、新しく家を建て、そこに水切り瓦を取り付けたいという人も多い。当然、隣の家より少しでも多く付けたいということになる。また細部の意匠も少しずつ違い、そのあたりも自慢のしどころ。かっこいい水切り瓦を家の目立つところにこれ見よがしに並べるのだ。今もそんな精神文化が残る町を歩くのは楽しい。
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Comment

No Title

水切り瓦~~これも初めて知りました。
本州に旅行の際に見たことがあったのかも
しれないけど、注意してなかったし、建築の話
は楽しいなぁ。
当地はなんせ雪があるので個人の家でも洋風
建築が多いです。
日本家屋風の商店などは案外小樽(昔は札幌
より経済の中心だった)に残ってて、小樽を散策
すると楽しいです。

No Title

小樽へ撮影に行きたいと思っているのですが、
まだ実現していません。
石造りの蔵店とかがあるそうですね。
早く行ってみたいです。
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プロフィール

Kimupon_Cicadan 木村 義志

Author:Kimupon_Cicadan 木村 義志
出身地 : 大阪市
現住所 : 東京都
1955年生まれ
科学図書執筆編集のお仕事
分野は生物学系

写真は特にクレジットや注釈がない限り筆者の撮影です。記事や写真についてのお問合せはなんなりと。
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