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やんわりと訪れる終戦直後の日本

 原発事故の今後のシナリオとしては、日本は震災復興と原発処理で莫大な出費を迫られ、しかも、様々な重要産品の生産が低下し、また、大気や海洋の汚染の補償が日本国内に留まらず、世界に及ぶ可能性がある。近隣各国に放射性物質が飛び、国際的な基準に照らした農漁業被害が出た場合、実際にやるやらないは別として、日本に損害賠償を求める裁判を起こす権利はあるし、それが全く理不尽な要求とはいえない。もし韓国の原発が大事故を起こし、日本海沿岸の魚が食べられなくなったら、韓国人は自分の食べ物を多少減らしても、賠償しろと思う日本人は多いのではないだろうか。

 となると、日本はもはや勘弁して下さいと謝るしかなく、原発の事故処理は国際的な監視下で、各国の支援を受けながらやるしかないだろう。つまりそれは、ある意味で敗戦日本の再来であり、しかも、爆弾や焼夷弾で焼き払われ、ハイおしまいとなるのではなく、ゆっくり始まり、どん底がいつくるのか、どこまで沈むのかが分かりにくい。これが放射能汚染の不気味な点である。いずれにしても、放射能汚染は長引くということだけがはっきりしている。

 日本政府と東電の対応は、これまでの1か月弱を見る限り、どんな点数も与えられない。マイナス点からの出発となる。
 ここで戦争の話をすると、違和感を感じる人もいるかもしれないが、私は大いに関係があると思っている。先の戦争の失敗について、外交、戦略、戦術面では様々な分析が行われているが、日本本土に対する防衛についての議論が少ない。本土防衛の思想は、まさに日本の防災思想そのものである。その実情見ると今の政府と完全に一致する。
 アメリカ軍は、日本に16万トンの爆弾を落としたとされる。アメリカの圧倒的な物量が日本の生産力を叩きのめしたと思う人は多い。しかし、同じ枢軸国のドイツは150万トンも落とされているのだ。日本の10倍である。日本はドイツの1割の爆弾で音を上げたことになる。この差はそれぞれの国の対空防御力、一種の防災体制の差を示している。

 ドイツは国土が戦場となっため、日本より爆弾の投下量が多いことも考えられるが、実はそれ以前から、ドイツの国力を弱めるため、工場や石油等資材の備蓄基地に大量の爆弾を落としていた。にも関わらず、ドイツは軍需工場の隠蔽や疎開、強化を早い時期から進め、空襲だけでは生産力がさほど落ちなかったというのだ。一方日本は航空機などの工場や製油所、石油タンクの半数以上を焼かれ、生産力を著しく奪われている。何の準備もせず、丸裸のまま放置したのだから当然である。
 ベルリンの地下壕は頑丈で、ソ連軍が市内に入ってもなお機能していたが、東京の大本営は、平時のビルのままであり、地方に疎開して地下壕を作ることに決まったのは、サイパン島が玉砕した後である。しかも、多数の労働者に苛酷な重労働を強いる突貫工事であったのにもかかわらず、終戦までに完成させることはできなかった。
 何年も戦争を続けてきた戦中の日本政府でさえ、防災意識は低かったのである。そう考えたくはないが、これが日本人の特徴なのである。

 日本は無常という文化を持つが、それは、繰り返される地震や津波、火事によって体得したものと分析する人が多い。栄枯盛衰、形あるものは必ず滅び、また新しいものが産まれるという感性は、人の力では抗しきれない圧倒的な自然の破壊力によって、全てを失った所から新しい生活を再開するときには役に立つ。しかし、放射能汚染は、日本人の無常観では対応できないだろう。どちらかというと行動力と工夫で相手をねじ伏せる必要があり、しかも、飽きずにいつまでも戦い続ける執拗さも要求される。
 日本人は広島、長崎を乗り越えたという人もいるが、核物質の量があまりにも違うので比較はできない。すでに多くの人が語っているが、福島第一原発に貯蔵されている核物質は、広島型原爆の4000発分。1%が漏れ出しただけでも、40発分の核物質が出ることになる。

 この事故は、簡単に乗り越えられる物ではない。何か月汚染物質を出し続ける。だから、日本が先進国だなんて思いは早々に捨て、謙虚に、飽くことなく国の再建を目指したいと思う。
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Comment

No title

そうですね、おっしゃる通りですね、
って終戦を体験したわけじゃないけど、
ちょうど終戦のころをテーマにした小説(佐々木譲の)を読んでて
今の原発の状況と重なってみえたので。
大義のために貴重で有用な情報を隠匿する政府や軍部、これって
政府や東電そのものですものね。
そして目に見えない放射能が、人体に悪影響を及ぼさない程度まで
収まってくれるには長い年月がかかりますよね、でも復興めざして
できることから元気に明るく~と思ってます。

↓の漁協の怒りももっともですし、↑の農協にも本気で現状に
取り組んでもらわなきゃ、これから作付始める農家の人も困惑
してますよね。

Re: No title

新聞とテレビしか見ない人と、ネットなどで情報を集める人との
情報格差がひろがりつつあります。私はそれが心配です。
東電は大手メディア幹部への締め付けを強化したらしく、
かすかによくなりかけた風通しがまた悪くなりはじめました。
記者会見のやり方も、少し変えてきています。

もはや東電と大手マスコミは、メルトダウンし始めた泥舟に呉越同舟ですね(笑)。
この辺も、戦時中と全く同じですね。

新聞と地上波のテレビは、事故前から沈み始めていましたが、
今回の報道で復活する道もあったのですが、愚かな対応ばかりしています。
本質が広告チラシであったことが露呈し、さらに寿命が縮まりました。

これから国家権力と大手マスコミによるミドルメディア潰しが始まります。
その手始めが総務省のネットのデマ規制です。
当初、総務省は難色を示したようですが、強いプッシュがあったようです。
それでもあんな中途半端なお達しで終わったのは総務省の良心かも(笑)。

新聞テレビだけを見ている人は、戦時中と同じ状況に陥りつつありますね。
本当の事を知らないのは日本人だけという状況です。

先日、海外のメディアがオーバーに伝えているという報道がありましたが、
あれもマスコミの「別ルート潰し」の始まりを意味しています。
バカなニュースは一部の2流番組に過ぎず、
世界の真っ当なメディアは、日本のニュースより詳しく伝えています。
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プロフィール

Kimupon_Cicadan 木村 義志

Author:Kimupon_Cicadan 木村 義志
出身地 : 大阪市
現住所 : 東京都
1955年生まれ
科学図書執筆編集のお仕事
分野は生物学系

写真は特にクレジットや注釈がない限り筆者の撮影です。記事や写真についてのお問合せはなんなりと。
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