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私は非国民でよい

 震災で被害を受けられた方、家族や友人をなくされた方、そして、突然命を絶たれた多くの方々には心から哀悼の意を捧げる。子どもの死者行方不明者が1,000人を超えると聞き胸が潰れる思いだ。
 またこの震災が人々の心に負わせた傷は計り知れない。親をなくした子ども達にはどう対応すればよいのだろう。生活環境が復旧しても、簡単に傷が癒せるものではなく、今後の生活に大きな影響を与えることは想像に難くない。慰めの言葉すら思いつかない。

 被災者は大きな顔をして、官民の援助に甘えるだけ甘えてもらいたいと思う。どうせ出来る事など限られているのだから。私は今のところ寄付ぐらいしかできないが、今後復興の状況を確かめつつ、できるだけのことをしたいと思う。長期戦になることは必至だ。

 ただ今回の震災に伴う原発事故には、少し別の感情を持っている。地震や津波という天災とは切り離して考えたい。もちろん、原発事故の被災者を助けないということではない。責任と因果関係を明確にして、区別すべきだと思うのである。
 原発事故は日本人の共同責任による人災である。事故の引き金が地震と津波なので、天災の一部と思う人もいるかもしれないが、全ては国、電力会社、電力消費者の責任であって、特に国と電力会社の責任が重い。また酷な言い方に聞こえるかもしれないが、原発を誘致した地元自治体にもその責任の一端があると思っている。それらに較べれば、発電方法を選択できない消費者の責任は軽いといえるが、自分が使う電気の作られ方に、無関心であったことの責任からは逃れられないだろう。

原発02

 写真は対岸から撮影した日本の原発の草分け「敦賀発電所」1号機。福島原発より古い。原子炉の廃炉解体は莫大な費用と時間がかかり、現実的には見守り保存となるので、日本原子力発電(株)では、改修して2016年まで使うつもりらしい。反対派が邪魔をするから、新しい原発が作れないなどとふざけたことをいう者もあるが、危険になった古い炉を解体して、より安全な新型炉を建設するなら合意が得やすいだろう。ところが実際は、すぐに解体することが難しく、何10年もそのまま管理しながら、新しい場所に発電所を新設するしかないのだ。この炉は米国GE製で、今となっては旧式の問題機といわれる。敦賀での事故・トラブルはこの炉が多い。関西人の恐怖の的 ?

 原発を作った連中は、想定外の地震と津波などと寝ボケたことをいってるが、全くそんなことはない。M8以上の地震は過去に何度も起きているし、直近の2004年のスマトラ島沖地震は、M9.1~9.3とされ、10mを超える津波が起きている。しかも日本は地震の多発地帯。これを想定外というなら無能の極みである。
 全体を管理する国。安全基準を定める原子力安全委員会。原発を建設し管理運営する電力会社。これらがグルになって、経済的に実現可能な、ホドホドの安全基準を作っていくのだから、今回の事故は起こるべくして起こった人災事故なのである。

 原子力とは、お湯を沸かすことしかできない、お化けのような熱の塊である。しかも、一度火をつけると消すのが非常に難しい、使い勝手の悪い過剰な熱源で、70年前に利用が始まってから今日まで、爆弾と湯沸かし器しか作れていないのだ。ただ、ちゃんと管理ができるなら、国民の合意と監視の下、少量の湯沸かし器ぐらいは使ってもよいと思う。でも現状は、金で無理に作り出した合意の下で、問題を隠蔽しながら綱渡りのような管理を続けてきた。おかしな事になってしまうのは当然である。
 原子力や原子炉、被曝とはどんなものであるかということを学校では教えない。小学生が電力会社の一方的な宣伝施設に遠足で行くぐらいだ。マスコミも電力会社に高額な広告料をもらっているから、原発の安全性を検証するような記事や番組は作れない。

 いちいち説明すると長くなるので結論だけをいうが、日本は原子力や石油がなければ電気が作れない国ではない。燃えカスの後始末や放射漏れのことを考えると決してクリーンではないし、ゴミの始末費用や廃炉後の維持管理費まで考えると非常に高くつく発電なのだ。
 では何故そんなものが沢山できたかというと、莫大な金が動くビッグビジネスなのである。官民が融合した独占的な業界であり、もちろん族議員もいるし、官僚としても天下り先が山のようにある美味しい産業なのだ。
 電力会社は原子力業界の一部に過ぎないが、消費者の生活に直結していることから、国民の反核意識を押さえる宣撫隊として、また欧米に追いつき、プラントの輸出販売を目指す業界の実験台として、さらにまた国民から金を集めて原子力業界に投資する胴元として機能してきた。原子力にほとんど無知な一般の人々が「電気をたくさん使う以上は原発が必要」と思うようになったのは、電力会社が40年かけて行った宣撫活動の賜物である。
 原発の諸問題は、多くの人が指摘してきたが、それ以上に多くの人が、とりあえず問題は先送りにして、目の前の金の魅力に飲み込まれていったということだ。

 電力会社は電気をたくさん売ることを目的にしている営利法人である。その証拠に、電化住宅など電気を使わせることに腐心し、夏に電力需用が過剰になったらときだけ節電を呼びかける。身内に東電の社員がいたが、経営者にもっと電気を売れと、よく発破をかけられたという。
 別に金儲けが悪いとは思わないが、電力会社はある種の政商であり、私としては商道徳的に気に入らない部分が多い。

 原発を誘致するとその市町村は100億円ぐらいのお金がもらえる。国も優遇措置をとる。原発がある町と、条件のよく似た別の町では、インフラの充実度に大きな差がある。地方税が免除される自治体もある。住民の電気代も安い。住民は安全や安心を電力会社や国に売り渡したのであるから、当然の代金を受け取ったといえるだろう。
 よく自治体の長は、町の発展のための苦渋の選択であったというが、いってることが矛盾しているように思う。同じように苦しい自治体はたくさんある。そこから抜け出すために打った博打、といったら失礼だが、ある種の積極的な経済政策であったはずだ。万が一の事故が起きれば、町を捨てなければならないことぐらい反対派の住民が訴えてきたはずだから、それは承知のうえでの選択であるといったら酷であろうか。
 このあたりのことは、全ての人々が認識しておいた方がよいと思う。例えキンキンうるさいと思っても、反対派のいうことも、よく聞いておけということである。
 それともう一つ、高額補償は一回きりということも知っておいた方がよい。福島原発事故の渦中にある双葉町は、すでに金を使い果たしたのか、現在厳しい財政難にあり、新たな原発の誘致運動をしていたという。役場が立派なので人口が数万人いるのかと思って焦ったら、6~7千人とのこと。そしてその人達は埼玉県に避難。あまりにも悲しい。

 もし原発を誘致したなら、最初の説明とその後の方針が変わるのは日常茶飯事と思った方がいい。自治体が変更に抵抗するのは難しいだろう。また事故の報告も、地元にはすぐに伝わらない。電力会社は、まず身内の霞ヶ関の監督官庁に伝え、そこから政府に報告が上がり、政府から県、県から地元というわけである。
 原発を誘致した自治体は、そんな不満を社会にアピールすべきであろうが、そんなことをすれば国や電力会社に睨まれ、財政支援面で不利益を被ったり、自治体の長の首をすげ替えるぐらいのことはされそうだ。大きな力を利用して豊かになろうと考え、逆に大きな力に翻弄される弱い人々の悲劇である。 

 こんなことをいってると「電気を使ってるくせに文句をいうな」と思う方もおられよう。しかし、電気を買う方は発電方法を選べないし、原発を作ってくれと頼んだおぼえもないのだから、批判しても文句を言われる筋合いはない。また消費者として売り手を批判するのは極めて健全な姿勢であるし、私は東電の奴隷ではなく顧客である。

 面白い話を一つ紹介しておこう。先代の福島県知事を務めた佐藤栄佐久は、歴代最長の5期15年も務めた人気知事であった。彼が知事に就任した88年にはすでに、福島第一第二の10基の原子炉が稼働しており、知事としてこれら太平洋岸の原発銀座を受け継ぐことになった。
 佐藤は、当初原発には中立の立場であったが、プルサーマル計画については安全性が確保できていないとして、東電との対立を深めた。だがしかし、まるでタイミングを計ったかのように、福島県で入札不正事件が持ち上がり、知事が逮捕されてしまう。本人は当初から今日に至るまで冤罪無実を主張しているが収賄容疑で有罪判決を受けた。原発がらみで国に逆らう佐藤への不当な国策捜査と考える人もいる。

佐藤雄平
佐藤雄平現福島県知事

 佐藤が辞任したあと知事になったのが、このところデレビでよく見かける民主党の佐藤雄平である。東電は早速プルサーマル計画の実施を求め、新知事はすぐにこれを受け入れた。その後拙速といいたくなるような早さでプルトニウム燃料の試験運用を進め、3号炉で商業運転を開始した。2010年のことである。3号炉での使用は、口の悪い専門家に言わせると、古い灯油ストーブでガソリンを燃すようなものだというが、そのあたりの技術的なことは分からない。ただ、プルサーマルのMOX燃料には、吸い込めば1gで300万人ぐらいが肺ガンになるという、この世のものとも思えないほど危険なプルトニウムが使われていることは事実である。現在こんな危険な燃料を使っているのは日本だけ。各国は安全性が確保できないとして断念している。東電によると日本のは安全なのだそうだ。

 ちなみに佐藤雄平の叔父はベテラン議員の渡部恒三である。渡部は自民党時代に「福島に原発を」の旗ふり役であり、原発族議員の一人と目されている。渡辺は東電から一定の支援を受けていたと考えるのが自然だ。彼らは福島の原子力一家といえる。

人間渡部恒三

 佐藤雄平はNHKの原発事故取材で、日本のエネルギーを支えてきた福島県への国の援助を求めていた。県民を助けて欲しいというのは、自治体の長として当然の主張であるが、電力消費者が福島に原発を求めたわけではない。主要消費地の首都圏により近く、すでに原子炉があった茨城県でもよかったはずだ。福島の原発誘致に熱心だったのは渡辺叔父さんであり、前任者が反対していたプルサーマル計画に賛成し、不安を高めたのは自分自身であることを忘れてもらっては困る。まずは、県民にその不明を詫びてから、消費地に理解を求めるべきであろう。
 
 私が怪我をして倒れた人を鞭打っているように見えるかもしれないが、このあたりのことは、絶対に有耶無耶にしてはならないと思うのである。
 原子力産業とは、かくも生臭くドロドロしたもので、原発は必ずしも国民ために作られたものとはいえない。日本の国策に反対する私は非国民である。でも、原子力産業の奴隷として憂鬱な毎日をおくるぐらいなら、日本人でなくてもいい。
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Comment

No title

電力事業に国策も含め大きな利権がかかわってることは
わかります。
そして直接は決められない消費者もそれを誘致する首長を
選ぶ段階で決定に参加しちゃってることも。
でも原子力発電に反対し、少数派だったために、それができちゃって
今、自分の土地を離れなきゃならない人たちは悔しいよね。

電気はクリーンなエネルギーでもっと電気を~~ってのは地球温暖化
とも関係してると思うけどこれも怪しいなぁ。
灯油を使う家庭機器(温水器だの、暖房だの、レンジだの)を作ってた
大手の電気会社が軒並みそれらの製作から撤退してるんですよね。

ぼんやりしてました

知り合いの中年女性が、昔、福井に原発ができるとき、
反対運動をしたそうです。
今回のことで「私たちがやったことは、間違ってなかったのね」と
言ってました。

そういう意識も何もなく、漠然と原発は危険だと思いながら、
「CO2を排出しないクリーンエネルギー」というテレビのCMを
なんとなく受け入れ始めていた私は、
今は反省のときです。

東電に非難が集中したら、東電社員の家族からの
「お父さんは現場で命を賭して頑張っています…」というような
メッセージがテレビでも取り上げられましたが、
命の危険な現場にいること、より大きな危険から国民を守ろうとすることは
貴いことだけど、そういう感情を揺すぶるようなことで、
問題をうやむやにしてはいけないです!
取り上げるテレビは変ではないですか?

それにしても、東電には副社長が何人もいるのですねぇ!

被災された方たちの心と体が少しでも回復しますように、
気持ちを送っています。

No title

>いーくんさん

 反対運動をしてた人は、確かに悔しいでしょうが、何が起きているのか分かっていますから、次の対策を立てやすいかもしれません。
 逆に推進派には、本当に安全だと思っていた人も多いので、二度と家には帰れない可能性があると知ったら、その方がショックが大きいかもしれませんね。
 いずれにしても、絶望して隠れて家に戻り、そのまま消息を断つ人が現れない事を祈ります。

 電気はエネルギーではなく、エネルギーの伝達手段です。電気をエネルギーと宣伝する時点ですでに、人を騙そうという意図が見てとれますね。

>シンシンさん

 私は30代まで脱原発に関わりを持っていたものの、その後は生物関係の運動の方が忙しくなって遠ざかっていました。ですから、今とても後悔し、また腹立たしく思っています。人が健康に住める土地がなくなったら、動植物の生息環境保全なんか意味ありませんからね。

 物理学者の高木仁三郎さんが亡くなる前、こういう時に事故が起きると心配していましたが、的中してしまいました。今ほど高木仁三郎や宇井純の声が聞きたいときはありません。
 ただ原子炉格納容器の設計者であった後藤政志さんが頑張っているので、少し救われます。

>お二人へ
 下は、昨日後藤さんが衆議院議員会館でレクチャーしたときの録画です。今福島で何が起きているのかよくわかるので、お時間がありましたらごらんください。

http://www.ustream.tv/recorded/13509182

追伸

上のURL、衆議院じゃなくて参議院でした。

ところで・・・

原発や自然災害では「サイアクの事態」を想定するのに
なぜ
国家の安全保障では「サイアクの事態」を想定しないのでしょーかね?
それが不思議です

戦争をなにがなんでも避けたいなら日本が強力な軍隊をもつことは必須だと思うのですが。
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プロフィール

Kimupon_Cicadan 木村 義志

Author:Kimupon_Cicadan 木村 義志
出身地 : 大阪市
現住所 : 東京都
1955年生まれ
科学図書執筆編集のお仕事
分野は生物学系

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