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信州の塔-3

 3つめは長野県小県(ちいさがた)郡青木村にある美しい塔の話。
 小県郡の村は大部分が昭和のうちに上田市に吸収され、最後に残った3村のうち2村は、平成の大合併でそれぞれ隣町と合併した。よって小県郡の村は青木村だけである。日本中で馬鹿げた平成の大合併の嵐が吹き荒れたとき、青木村は合併不参加宣言をしたというから偉い。さすが反骨の村である(近世~近代に起きた信州の世直し一揆の発信源で、打ち首覚悟で一揆を指導した義民を輩出している)。この地域には「夕立と騒動は青木から起きる」という言葉があり、住民はそれを肯定的に捉えているという。住んでみたいぞ青木村。

 よけいな前置きを書いてしまったが、下が青木村大法寺の三重塔。塔は下の層から上の層にいくほど順に細くなるのだが、大宝寺の塔はその減少比が大きく安定感を感じさせる。その比率は凡そ100 : 75 : 65で、前に紹介した前山寺の三重塔は100 : 92 : 80だから、後者はかなりずん胴ということになってしまう。
 また、単純に上層を細くするだけだと、それに応じて屋根の幅も変わり、三角形の建物に見えてしまうので、1層目の軒の張り出しを浅くしてバランスを整え、さらに屋根の四隅の反りを強めることで軒が浅い印象を打ち消すという手法がとられている(もちろん反りを強めた製作者の本当の意図は不明なのだが)。なんとも素晴らしいプロポーションの塔である。

大宝寺塔

 下の写真は1層目と2層目の軒の差を示す写真。このような塔では軒を支えるL字型の部材(肘木)を3段重ねにする三手先という組み方が定石で、そのことで建物の格も表しているというのだが、一層目は全体のデザイン優先で2段重ねの二手先にとどめてある。ちょっと見えにくいかな。

大法寺組手

 このように各層の幅を大きく変えて美しく見せる手法は、それより100年以上前に建てられたであろう奈良興福寺の三重塔ですでに用いられているが、そちらは瓦屋根のうえに漆喰壁なので趣がかなり違う。頂部の装飾以外全て木と木の皮で作られ、静かな山の中に佇む姿には、南都の大寺院の建物にはない魅力がある。
 建てられたのは1333年。建築を指揮したのは大阪四天王寺の工匠ということが、大正時代の解体修理の際分かったという。どうでもいいことだが、四天王寺といえば自分が生まれた場所のすぐ近く。毎年お盆の引導鐘をついてもらいに行った場所。それを知って急に親しみが湧いた。
 あと興福寺の塔だが、子供の頃から何度も見てるし、奈良に行ったら割とよく寄るのだが(主に猿沢の池の亀の観察だけど)、デジタル時代になってから写真を撮っていないので、興福寺のサイトの写真を。なんせあの阿修羅くんのいるお寺なので知ってる人も多いかな。
http://www.kohfukuji.com/about/construction/sanjunoto.html

 このお寺には国宝塔の他、堂型の大きな厨子に入った平安時代の十一面観音がある(観音像と脇侍の普賢菩薩像、厨子、それを載せている須弥壇の4点が重文指定)、普段は厨子の扉が閉じられているのでお顔は拝見できない(事前に申し込めば見せていただけるらしいが、それを知らなかったのと、お寺の方に無理をお願いするのも何なのでお参りは外から。閉じた厨子でもありがたい仏様であるのだ。でも次回は事前に電話させてもらおっと)。
 写真を見ると少しおデブで口が少し開き気味(のように見える)のホンワカした表情で、じっと見ていると楽しく幸せな気分になる観音様である。
http://www.vill.aoki.nagano.jp/assoc/see/tera/img/tera/eleven.jpg

 下は厨子におわす十一面観音像を祀る大法寺観音堂。江戸時代に建てられた質素で素朴なお堂である(屋根は近年の改修。オリジナルは多分茅葺き)。塔が左の山の上にちょっと見えている。本当に静かで気持ちのいいお寺であった。木造建築がお好きな方は必見のお寺さんと断言する。もちろん信仰あつい方も。

大法寺観音堂

 
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プロフィール

Kimupon_Cicadan 木村 義志

Author:Kimupon_Cicadan 木村 義志
出身地 : 大阪市
現住所 : 東京都
1955年生まれ
科学図書執筆編集のお仕事
分野は生物学系

写真は特にクレジットや注釈がない限り筆者の撮影です。記事や写真についてのお問合せはなんなりと。
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