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信州の塔-2

 一度に書くと長くなるので1つずつがいいかな。

 今日は日本の塔の中でも特に珍品とされる安楽寺三重塔のご紹介。一目で珍品と分かる八角形の塔である。
 これが現存する唯一の八角塔なんだそうな。あっ、近代建築には断面八角の塔があるな。そういうのは別。近世以前の木造で三重以上の塔の中で唯一ってことね。
 場所は信州の別所温泉の近くにある。屋根が4つあるので四重塔みたいだが、一番下のは裳階(もこし)といって廂(ひさし)にあたるのでカウントしない。一層目の壁は一階外周廊下の囲いというような構造になっており、内側に入って見上げると裳階の垂木がそのまま見えるのだそうだ。う~ん・・・見たいぞ。

安楽禅寺

 とにかく造形がすごくて、細かく連続する組物や垂木を見てると目が回る。内部は非公開だが一層内陣には八角形の天井が張ってあり、細かい細工が施されているそうだ。う~ん・・・これも見たいぞ。

安楽禅寺塔02

 今ではこれしか残っていない八角塔だが、奈良~平安時代には憧れの人気塔であったらしく、基礎がいくつか発掘されている。中でも京都市動物園から出てきた法勝寺の塔跡は九重塔で、推定高なんと80メートル!!。ほんまかいな・・・・。
 そんな建物は「雷さんこちらへどうぞ」といってるようなものなので、何百年も残ることなどあり得ないのだが、もし現存していたら高いビルが増えた現在でも遠くから見える(80メートルといったら高層マンションの28階ぐらい)。唐の都に憧れてた当時の人々には超カッコいいランドマークであったに違いない。

 その後あまり作られていないのは、なにより金がかかるということが大きいだろう。
 奈良の西大寺では、七重の八角塔を建てようとしたが諸般の事情で五重八角に。その後紆余曲折あって結局できたのは四角い普通の五重塔、ということがあったらしい。
 安楽寺の八角塔は鎌倉時代末の作とされるが、小塔とはいえこのように豪華な塔が建てられたということは、この時代の上田市あたりはが豊かで安定した地域であったといえるだろう。

追記(2011.01.08)

 記事番号58「これで塔はしばらくお休み(笑)」で紹介した武澤秀一によると、塔婆の起源となったインドのストゥーパは、参拝行動として塔の周りを歩く円運動が重要な意味を持ち、その宇宙観が空海の初代根本大塔や根来寺の大塔(それぞれ内部に円運動のスペースを持つ)の構造に受け継がれているという。
 それをふまえて八角塔の一層目の裳階(もこし)と、その下の木製の外壁を見ると、それは単なる装飾ではなく、塔の周りを回りながら祈る特別なスペースを作り出し、さらには参拝者を信州の寒さから守る実用性も兼ね備えた設備ということになる(もちろん四角でなく八角であることも円運動に関係しているといえる)。
 残念ながら一般人は中に入れないのでスペースの確認は出来ない。一層目の平面図を探してみたい。

 現在の安楽寺は曹洞宗であるが、塔が建てられてた頃は密教寺院であったことも、インドのストゥーパ参拝との関連を裏付けるものと思う。
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Kimupon_Cicadan 木村 義志

Author:Kimupon_Cicadan 木村 義志
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1955年生まれ
科学図書執筆編集のお仕事
分野は生物学系

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