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文化財

信州の塔-1

 またしても、更新をサボってしまった。撮りためたネタを少しアップしておこう。

 前にも少し書いたけど塔めぐり。国宝、重文クラス物件はざっと120ほどだから、コレクションとしては適正規模。しかも1年中そこにあるのだから、日本産のチョウやトンボを120種集めるよりずっと簡単だし、それなりに満足感もある。というわけで、終盤に近づいた日本の城郭と近代化遺産めぐりと平行して、昨年あたりから塔めぐりを旅行の余禄に加えることにしている。

 まだ写真が少ないので、コレクションとして自慢できるようなものではないが、とりあえず最近行った信州の三重塔を。
 三重塔というのは奈良薬師寺のツインタワーは別として、五重塔より地味である。目立つ建築物でありながら小ぶりで威圧感がなく、中でも桧皮葺や葺の屋根の物件は素朴で上品。そんなところが魅力と言える。信州の5塔はいずれも国宝・重文だけあって、なかなかの名品揃いである。

前山寺塔01

 これは上田市の前山寺の塔。「未完成の完成品」などと呼ばれているが、その名の通り、柱と屋根などの主要部分が完成したところで柱間に簡単な板壁をはめて、工事を終わりにしてしまった塔である。だから2層目3層目には廻縁や高欄はもちろん窓さえなく、ただの木箱のようになっている。
 しかしながら手抜き工事の半完成品といった印象は薄く、基本デザインが勝れているので全体のフォルムが美しい。未完に終わったことすら一種のドラマ性として魅力の一部になっているといえるだろう。
 下の写真は2層目の角。廻縁や高欄の土台となるはずの胴抜が柱から突き出している。また本来なら窓となる部分がただの板壁になっているのが分かる。

前山寺塔02

 未完になった理由としては、鎌倉時代にこの地を支配した北条一門が、新田義貞ら倒幕軍の攻撃に備え鎌倉に退いたため、寺は有力な支援者を失ったという説があるが、重文に指定した文化庁は、この塔の製作年代を室町後期と推定している。いずれにしても鎌倉末期から室町末期までは、全国的に政治が不安定であったから、寺院建設が中断することなど日常茶飯事であったろう。
 これがもし地元の工匠の手によるものとすれば、少しずつでも完成に向けた工事が続けられたと思うが、未完のまま止まってしまったということは、上方あたりの技術者集団を招聘して建築を進めていたものの、何らかの問題が生じて職人達が去り、以後戻ることが無かったのではないかと思う。
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プロフィール

Kimupon_Cicadan 木村 義志

Author:Kimupon_Cicadan 木村 義志
出身地 : 大阪市
現住所 : 東京都
1955年生まれ
科学図書執筆編集のお仕事
分野は生物学系

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