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糸を吐き繭を結びて世のために 死を返り見ぬ虫ぞ貴き

 このところ仕事に追われ、部屋に閉じこもっている。思い出すのはあちこちうろついた楽しい思い出。というわけで現実逃避、怒濤の連続ブログ更新(笑)

 蚕糸の町岡谷には、立派な蚕の供養塔がある。
 タイトルの歌はそこに掲げられていたもの。詠み人は曽我部俊雄大僧正。

蚕霊供養塔01

 写真がその岡谷市本町にある照光寺にある蚕霊供養塔。
 昭和9年建立で、高さ11mの小さな塔だが手抜きのない本格木造建築だ。お寺の表示には多宝塔造りとあったが、古式の多宝塔建築と違って、正面に唐破風を付け、二層目も方形で亀腹(普通の多宝塔の二層目基部にある白い饅頭みたいなやつ)を欠く、お堂と塔の折衷案のような建物。
 一層目が細いためやや安定感を欠くが、細工はなかなか立派だ。棟梁は石田房茂という人。あまり詳しいことは知らないのだが、諏訪大隅流の名工で、信州各地に作品が残っているという。
 平成7年に銅屋根に葺き替えたとあるので、それまでは今のような銅葺きではなく古風なこけら葺きだったのだろう。
 新しいものを建てる人は、寺社であっても古典の100%コピーであってはならないと思っているので、こうした高度な木造建築技術を基礎に新しさに挑戦するのは大好きである。評価は100年ぐらい経った頃に下るだろう。

 戸には蚕の供養塔らしく桑の葉の彫り物がはめ込まれている。
 日本の皇后さんは代々蚕を飼っておられる関係からか、貞明皇后が昭和24年に参拝されている。

蚕霊供養塔戸

 4月29日の法要には、僧侶と檀徒によって以下の和讃が詠じられる。

野山に繁る草も木も、葉末にすだく虫にだに、
分ちたまひし魂の、わきて勝れし蚕には、
そも掃立の其日より、やがて死すべき誓願の
偲ばるヽさへ貴きに、桑の一葉に足るを知り
四度眠りの夢さめて、精進うまず糸を吐き
繭を結ぶは知恵の業、さて世の中に施興の
功績を残し潔く、身を犠牲の心こそ
偲ぶもいとど貴しや、さらば諸人集りて
尊き虫の魂に、篤き供養を捧げつヽ
永久の解脱を願はなむ、南無蚕霊大菩薩

 作詞はタイトルの歌の作者と同じ。掃立とか四度の眠りとか、さすがは岡谷の大僧正、蚕のことをよく知ってるなあ、と思って調べたら、曽我部俊雄師は大阪は河内の金剛寺の和尚を勤めた後、高野山の金剛講総本部詠監に就任。和讃の楽理を研究、編纂した名僧とのこと。ちなみに河内の金剛寺は女人高野として名高く、大好きな重文の多宝塔のあるお寺。7月に塔の写真を撮ってきたので近いうちに紹介したい。

 和讃というのは ↓だいたいこんな感じの歌ね。日本の賛美歌みたいなもんといったら怒られるかな。グレゴリオ聖歌以前のそれと似てると思う。詞の内容は違うが、同じ真言宗金剛流和讃を参考までに無断リンク。音楽ホールで拍手されながら和讃を詠ずるのもちょっと奇妙な感じ。




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プロフィール

Kimupon_Cicadan 木村 義志

Author:Kimupon_Cicadan 木村 義志
出身地 : 大阪市
現住所 : 東京都
1955年生まれ
科学図書執筆編集のお仕事
分野は生物学系

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