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小田原城のウメ子



 小田原城は神奈川県内で唯一、日本城郭協会の「日本100名城」に選ばれた城だが、天守は鉄筋コンクリートの展望台となっており、城内に遊園地や動物園があったりして、昭和の庶民が愛したリクレーション施設としての「お城」を体験できる場所である。
 最近の城跡は、歴史的な遺構としてアカデミックな方向にシフトしようとしているが、自分が子ども頃のお城とは確かに小田原城のようなものであった。
 こうした城の有り様については、木下直之の「わたしの城下町─天守閣からみえる戦後の日本」に詳しい。怪しい城と日本の戦後という時代に対する愛に満ちた好著である。

 最近は小田原城も江戸時代の姿の復元に向けて整備が進められているが、そうなると動物園も遊園地も姿を消すだろう。しかし、まだ貧しかった昭和の子供達を楽しませた施設の記録は消し去らない方がいいと思う。100年後には新築された天守より貴重なものになっているような気がしてならない。



 小田原城で長年暮らして来たゾウのウメ子。来日したのは昭和25年だから、昭和35年竣工の小田原城天守より古株だ。

 ゾウのいる小田原城に物足りなさを感じる歴史ファンは、すぐ近くにある石垣山に行かれるとよい。そこには豊臣秀吉が小田原攻めの陣城として築いた「一夜城」がある。城域には当時の遺構が思いのほかよく残っていて、その石塁や廓の規模から、この城が一夜どころか、かなりの労働力と時間をかけて築かれたものであることが分かる。
 しかも一夜城は現在見られる徳川時代の小田原城より様式が古く、石垣の手法も野趣に富んでいるので、古城の風情を満喫できる。



---追記---
この記事を書いたのは2008年9月だが、
1年後の2009年9月、小田原城のゾウのウメ子が亡くなった。
推定62歳。人間なら100歳を超える長寿であった。
長い間小田原城を訪れる子供達を喜ばせた
日本を代表するゾウさんの1頭だった。
城内に設置された献花台には多くの市民がおとずれたという。

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プロフィール

Kimupon_Cicadan 木村 義志

Author:Kimupon_Cicadan 木村 義志
出身地 : 大阪市
現住所 : 東京都
1955年生まれ
科学図書執筆編集のお仕事
分野は生物学系

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