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文化財

お寺の塔

 先日大阪へ行った。実家に帰省したのではなく、大阪と和歌山の県境をうろうろしただけ。
 大阪市内から南海電車に揺られて行けば、頭の中に座標が形成されて見慣れた懐かしい風景になったと思うけど、羽田から関空へ飛んで、初めて見る失敗都市りんくうタウンから泉州に入ったので、どこか知らない土地を訪れたみたいで面白かった。

 梅雨時だったのであまり多くは期待しなかったけど、見たかった建物を全部見ることができたので大満足であった。

 で、これがその物件の一つ。河内長野市にある観心寺というお寺のお堂。この写真を見て何か変だなと感じた人はお堂の通 ?
 観心寺建掛堂

 こんな日本昔話のアニメに出てきそうな茅葺きのお堂にしちゃ屋根がゴツ過ぎるし、それを支える木組みが豪勢過ぎるでしょ。実はこのお堂、五重塔や三重塔といった層塔建築の1階部分に、茅葺き屋根をポンと乗せたもの。
 寺に伝わる伝説では、楠木正成の援助で塔の建設を開始したが、1層目が完成した時点で正成が討死。工事が中断したためにこのような形になってしまった。だから名前も「たてかけ堂」というのだと。でも実際は楠木正成が死んでかなり経った16世紀初頭にできた建物らしい。
 古い文書によると当初観心寺には三重塔があり、その後の資料によると二重塔になっているらしい。現存するのは一重だけ。時代とともに1層ずつ減ってきたというのだ。おそらく塔が老朽化して倒壊の危険が生じたものの、三重のまま修理するだけの資金繰りがつかず、一層ずつ低くして倒壊を防いだと思われる。
 こうした層塔には、上下に建物を貫く心柱はあるが、心柱が塔を支えるのではなく各層を積み上げていく構造なので、こうした大胆な修理ができるのだろう。

観心寺建掛堂垂木肘木

 雨の薄暗い日に適当に撮った写真なので写りが悪いな。本来なら整然と並ぶ垂木の部分が、竹や丸太を縄で組んだ素朴な構造になっているのがお分かりいただけるだろうか。今見られる屋根は昭和50年代に葺き替えられたもの。文化財建造物保存技術協会の資料によると、その前は昭和15年に葺き替えている。もし文化財保護の思想がなかった時代、お寺に潤沢な資金があればきっと塔を新調していただろうから、このように部分的にせよ貴重な中世の建築は残らなかったはず。そう思うと建物の運命というのは分からないものである。

尾道天寧寺三重塔

 老朽化した塔を修理するのに層を減らすという方法は、希有なことではなく他にも現存例が2~3あるそうだ。これはその一つで筆者が前に見た尾道の天寧寺三重塔。14世紀に五重塔として建てられたが、傷みが激しくなったので17世紀末に三重に改修され現存している。五頭身が三頭身になったのでずんぐりむっくり。あまりカッコよくはないが貴重な中世建築の一つである。
 近現代の建築でも、出来るだけ建て替えず古い物を残していく努力は重要だと思う。これだって17世紀末にカッコイイ塔を新築してたら室町時代の建築は残らなかったのだから。

 塔の残骸だけ見ると、観心寺は寂れた寺のように思われるかも知れないが、実は大阪きっての名刹のひとつ。1/3重塔のほかに凄い宝がゴロゴロある。大きいものでは14世紀に建てられた国宝の金堂があり、そしてなにより平安密教界のアイドル、我らが如意輪ちゃんが大切に祀られているのだ。如意輪ちゃんこと如意輪観音座像(国宝)は年に一度しか姿を現してくれないが、ベティさんのようなチャーミングなお顔、立て膝、ムチムチの腕・・・。4月の御開帳には一目見ようと全国の善男善女の他、筆者のように「秘仏」とか「御開帳」という言葉に興奮する罰当たりな心の持ち主も多数訪れる。
 如意輪ちゃんの写真を持ってないので、見たい人のためにレプリカ仏像販売業者のサイトを。
http://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/2han/cabinet/00023170/marts-58-1.jpg
 これ7万円だって。よくできてるので美少女フィギアに較べたら随分リーズナブルだとは思うけど、やはり手が出ないな(笑)

追伸
ネット上にそこそこ大きな画像を発見。肖像権はどうなってるんだろう。
実物はやはり経年変化の重みをたたえ、心に迫るものがありますな。
→  観心寺如意輪観音座像
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プロフィール

Kimupon_Cicadan 木村 義志

Author:Kimupon_Cicadan 木村 義志
出身地 : 大阪市
現住所 : 東京都
1955年生まれ
科学図書執筆編集のお仕事
分野は生物学系

写真は特にクレジットや注釈がない限り筆者の撮影です。記事や写真についてのお問合せはなんなりと。
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