備忘録/自然・文化・社会とニュース

文化財

「うだつがあがらない」語源考

 「うだつがあがらない」という慣用句は「地位や生活などがよくならない。ぱっとしない」といった意味だが、その語源についてはいくつかの説がある。たとえば、(株)ルックバイス運営のネット版「語源由来辞典」には以下の4つが紹介されている。

1. 梁と棟木の間に立てる部材を「うだつ(別名小屋束)」といい、い
  つも屋根に押さえつけられている姿を人の境遇に見立てたもの。
小屋束S
   建築部材の「うだつ」は赤い部分で、小屋束ともいう。
2. 家を建てるのに1のうだつも立てられない、または、うだつを欠く
  ような家に住む境遇にあること。
3. 井戸の石積みの最下部に置く木枠を「うだつ」といい、1と同様に
  年中押さえつけられている境遇にあること。
4. 装飾的な防火壁も「うだつ」といい、それを付けるにはお金がかか
  るため、うだつは成功の証しと見られた。
うだつアップ

 さらに大辞林や大辞泉では次の説が紹介されていた。

5. 家を建て棟上げすることを大工言葉で「うだつがあがる」といい、
  それが転じて志を得るという意味になった。

 13は「上から押さえつけられていること」に注目しているが、特に上から押さえつけられなくても、その人に能力や運がなければ「うだつがあがらない」状況に陥る。説明としては不十分であろう。
 またこれらは「うだつ」というものの状況を示しているだけであって、「うだつがあがるかどうか」とは無関係なので、言葉の構成としても無理が感じられる。だから13の建築部材説は除外してもいいと思う。

 有力な説と感じられるのが2.4.5.で、25はほぼ同じ意味である。
 その25について少し意地悪な見方をすると、棟木を支える部材の「うだつ」は、安普請の家にもあるし(これがないのはテントのような仮小屋ということになってしまう)、逆に天井を貼った立派な座敷だとうだつが見えない。「出世して立派な家を建てる=うだつがあがる」とするには、ちょっと無理があるように思う。
 ただし、一般人が専門職の符牒を真似て、それが慣用句として広まることは、いかにもありそうなので、捨て難い説ではある。

 一番もっともらしい説と思えるのが4の防火壁である。商売で成功した人は家に豪華なうだつ(防火壁)をあげ、それがステータスシンボルとなった。家にうだつがあげられない人は、うだつがあがらない人というわけである。

美濃町並

 うだつのある古い町並は中部から西日本にかけて多く見られるが、上の写真の岐阜県美濃市は町ぐるみで美濃和紙と「うだつのあがる町」の整備と宣伝に力を入れている。

小坂酒造01
 
 上の写真のように建物の両端に防火壁を設け、その上面に瓦を載せたのが「うだつ」である。上は美濃の町並でも特に古いとされる小坂酒造所。安永元年(1772年)築と伝えられ、国の重文に指定されている。ゆるやかな曲線を描く「むくり屋根」が美しい。

海野宿うだつ

 こちらは信州の北国街道沿いにある海野宿のうだつ。写真の建物は明治以降のもので、うだつが目立ち、美濃とは違った雰囲気がある。一番手前は近年改修されたもので鯱ほこが載っている。防火というより装飾性に重きが置かれた変則的なもの。

福井袖壁

ちなみに ↑ こういうのは袖壁というらしい(福井県若桜町)。

上田うだつ

 こちらは信州上田。うだつと袖壁の中間的なもので「袖うだつ」と呼ぶ人もある。明治初期の建物で、昔は呉服店を営んでおられたようだが今は喫茶店となっている。

脇町うだつ

 徳島県脇町のうだつ。このようにうだつが低く、大屋根の破風が露出していると防火力が落ちると思われるが、うだつに厚みがありどっしりとした構えである。脇町にはこのタイプが多い。

篠山/妻うだつ

 これは兵庫県の篠山市でみつけた変わり種。屋根の妻側に付けられており、完全な装飾品。大正末~昭和初期の建物と思われ、看板建築の一種に分類できるかもしれない。

関連記事
Comment

No Title

こういう防火壁をうだつって言うんですね。
写真では見るものの、当地にはない街並みです。
上から3番目の写真(酒屋さん)のうだつの
下の曲線の塀(!?)のような物は何と言う
ものですか?そして何に使うのかな。
こういう古い街並みでは歩道と車道の区別
(ラインはひいてあるけど)があまりないんですね。
昔は自動車がないから当然か。

Re: No Title

> 下の曲線の塀(!?)のような物は何と言う
> ものですか?そして何に使うのかな。

竹を曲げて並べたやつですよね。
それだったら「犬矢来(いぬやらい)」といいます。
雨や泥跳ね、犬猫の尿が壁にかからないようにするものです。

壁の塗り替えや貼り直しより、定期的に犬矢来を取り替えた方が安価(笑)
美観と経済性を両立させるアイデアです。

大阪の町中で育ったので、子供の頃は普通に見るものでした。
最近は付ける家が減ってますね。
犬猫よけにペットボトルに水を入れたのを並べてる家がありますけど、
まあ、用途は似ていますね(笑)。でもあれは、あまりにも無粋。
こういうのが流行るといいんですけどね。

> こういう古い街並みでは歩道と車道の区別
> (ラインはひいてあるけど)があまりないんですね。
> 昔は自動車がないから当然か。

ちょっと前はもう少し今風の町だったんですけど
電線類を全部地下に埋めて電柱をとっぱらい、
目障りな看板なども撤去して昔の風景に戻しました。
あと、舗装も無粋なアスファルトから、柔らかい色のものに変えてます。
自治体と地域住民の努力の成果ですね。
だからこの辺は、物陰の地面から電線が出てるんですよ(笑)。

No Title

ああ、いぬやらいがこれでしたか。
いぬやらいは聞いたことがありながら、実物
と一致してませんでした。用途は想像通り
でした。
家の周りにじゃりをしいたりして、そこを
「犬ばしり」って言いますよね。家の外側に
関して犬がつく言葉多いですね。
Trackback
Trackback URL
Comment form













管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

Kimupon_Cicadan 木村 義志

Author:Kimupon_Cicadan 木村 義志
出身地 : 大阪市
現住所 : 東京都
1955年生まれ
科学図書執筆編集のお仕事
分野は生物学系

写真は特にクレジットや注釈がない限り筆者の撮影です。記事や写真についてのお問合せはなんなりと。
小さな写真はそれをクリックすると大画像が開きます。

検索フォーム
ブロとも申請フォーム
QRコード
QRコード

Page Top
Powered by FC2 Blog | | Template Design by スタンダード・デザインラボ